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10か月の乳児にも思いやりの心?

 まだ言葉が話せない生後10か月の乳児に、攻撃者と犠牲者の二つの図形のアニメを見せてその後にどちらの図形を選ぶかについて実験したところ、犠牲者の図形が選択されるという研究結果が報告されました。さらに、中立の図形を加えた3個のアニメを見せて攻撃者と中立、中立と犠牲者でそれぞれ選択させると、いずれも後者を選択したそうです。これらの実験結果から、犠牲者に共感を示し、攻撃者には共感しないことがわかります。
 研究は英文の学術誌PLoSOneに発表されたもので、PLoSOneは全文インターネットで公開されていますので誰でも無料で読むことができます。公開された論文のサイトでは実験に使用したアニメも見ることができます。攻撃者と犠牲者のアニメは青い丸が黄色い四角を追いかけながら接触を繰り返し、最後に両者がつぶれる画像で終了するものです。実験では、攻撃者と犠牲者の図形を入れ替えたものも使用して色や形の好みで図形を選んでいないことを確認しています。研究グループの京大、鹿子木(かなこぎ)康弘特定助教のコメント「人間の本質は『善』だと示唆している可能性がある」から、報道では性善説を示唆する結果としています。
 アニメを乳児がいじめるものといじめられるものとの関係性で理解できたかどうかは分かりません。仮に理解できていじめられた方を選んだとして、いじめられたことに共感(sympathy)を感じたのか、弱い(強くない)から害がないと思って選んだのかは分かりません。この研究結果だけで10か月の乳児にも思いやりの心があるとの結論は無理がありますが、大変興味深い研究です。
 通常、動物実験では今回のように図形の選択に有意差があれば有意に選択された結果を重視し、異なる図形を選んだ個体については考慮しません。乳児の実験でも同じように解釈しますが、仮に犠牲者の図形の選択が思いやりの心であれば、20人のうち4人が攻撃者の図形を選択している実験結果に注目すると、10か月齢で思いやりの心がない少数者がいる可能性も示唆していることになります。行動による試験は反応に個体差が大きく少数者で有意な結果を導くことは大変難しいのですが、犠牲者を選択した乳児と攻撃者を選択した乳児で異なる特徴があれば更に研究が発展していくのではないでしょうか。

at 08:33, kameriki, 医学

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