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負動産時代 マイナス価格となる家と土地

 不動産価格が下落して「負動産」となる時代、各地で起こっている不動産に関する問題と解決のヒントになる動きについて紹介しています。問題の一つ目はマンション。都心部では日銀の異次元緩和による金余りでバブルの再来を思わせるようなマンション価格の高騰が見られるようですが、地方のリゾートマンションでは空き家が増え管理費の滞納が問題となっているようです。リゾートマンションは温泉などの共有スペースが多く管理費が高いため、売れなくなれば固定資産税や管理費がかかるだけの「負動産」となります。所有者が死亡して相続人がいないマンションを管理組合が競売にかけるためには不動産名義を変える必要があり、そのような物件は登記簿に「亡○○○相続財産」と表記されるそうです。管理費などの滞納があれば物件を購入した人は負債を引き継ぐため物件価格は滞納費を差し引いた価格が設定されますが、マイナスとすることができないため滞納費が多ければ競売の最低入札価格は1万円と設定されるそうです。共用施設は管理費を滞納しても利用できるため、湯沢のリゾートマンションでは落札者が管理費を滞納したまま温泉を利用し、管理組合が水道を停止して追い出した例もあるようです。同じ業者が一つのマンションの複数の部屋を落札して管理組合を乗っ取り、修繕積立費などの資産を横領するリスクもあるようです。裁判所による競売ではなく、民間でネットオークションを行う「不動産競売流通協会」という組織もできたそうです。リゾートマンションで起こった問題はこれから地方の老朽マンションでも起こり得る問題です。

 「負動産」はマンションだけではありません。売れない地方の空き家、森林など増える一方です。売れないのに税金だけかかるため手数料を払って相続登記をするインセンティブが働かず、相続人が死亡すると所有者は鼠算式に増えて一部は連絡不能となり、長年相続登記されなかった不動産は利用できない所有者不明土地となってしまいます。このような土地は2016年で九州より広い410万ヘクタールと推定されているそうです。

 不動産の相続登記には登録免許税がかかりますが、その金額は固定資産評価額に依ります。固定資産評価額は相続税、固定資産税の根拠にもなりますが、土地の評価は路線価によって決められます。毎年路線価を決める公示地価は不動産鑑定士による国交省の土地鑑定委員会が評価していますが、不動産売買が盛んな都市では実勢価格より低く、取引の少ない地方では高くつけられているようです。地方の貴重な財源となっている固定資産税を下げるような低い路線価はつけにくいようです。道路に接している土地の面積(間口)の広さで土地の固定資産評価額が変わりますが、土地の形状や隣地との境界を示す全国の公図がずさんなため間違った公図を元に評価額が高くつけられ税金が取られすぎている例があるようです。相続登記をしなくても「死亡者課税」と言って、自治体が不動産の相続人代表者に固定資産税の支払いを求めるため、固定資産税からは逃れられないようです。フランスやドイツでは滞納すれば不動産を差し押さえるそうですが、日本では給与などが差し押さえられ、多くの場合自治体への不動産の寄付も受け入れられないため、売却しない限り税負担から逃れられません。

 所有者不明土地が生まれる背景に相続登記が義務化されていないことがあります。そのため罰則付きで義務化する議論もありますが、そうすれば登録免許税を徴収することに理解が得られなくなり、難しいようです。フランスのコルシカ島でも所有者不明土地の問題があり、対策として時限立法で、時効取得のための共有地の処分を所有者全員から3分の2の同意で可能と変更し、贈与税の5割を減免、登記情報を一括管理する専門機関を設けて相続人の調査まで行い、8年間で所有者不明土地が2割減ったそうです。

 国内の空き家対策の一例として、室蘭市の取り組みが紹介されています。危険な空き家は自治体が取り壊せる「空家対策特別措置法」もできましたが、室蘭市の制度は近隣住民の負担で危険な空き家を取り壊し空き地を無償で譲り受ける制度です。新たな土地の所有者は10年間宅地や営利目的の駐車場としての利用はできませんが、取り壊し費用の9割(上限150万円)まで助成されるそうです。空き家の所有者が分からなければできませんが、所有者への説得も市が行うとのことで、近隣住民は一部費用の負担でより良い住環境が手に入り、空き家の所有者も解体費を負担することなく固定資産税の支払いなどの義務から解放されます。対象となる空き家は空き家の一部に過ぎないかもしれませんが、このような地道な対策の積み重ねでしか「負動産」の問題は解決できないのでしょう。

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