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科学者はなぜ神を信じるのか

 カトリック教会の助祭で理論物理学者の著者が歴代の科学者、主に物理学者が「神」をどのように考えていたか、考察した本です。著者の見解は終章に記されていて、「科学法則の創造者を『神』と定義しています。ルールが存在するということは、その創造者である神が存在するということだ、と考え」ているようです。実在した人物であるキリストが「神」、と信じるキリスト教の神とはずいぶん違う「神」のように感じますが、キリスト教の神は父と子と精霊の「三位一体の神」で、この世に降りてきた「子」であるキリストを唯一の神とするのは厳密ではないと解説していますので、著者の中では矛盾はないのかもしれません。

 「日はとどまり 月は動きをやめた」という旧約聖書「ヨシュア記」の記述に反しているとして攻撃された地動説を唱えたコペルニクスはカトリックの司祭で、異端として裁判にかけられたガリレオもカトリックの信者でしたから、彼らにとって神を信じることは当たり前でした。ガリレオは「聖書と自然はともに神の言葉から生じたもので、前者は精霊が述べたものであり、後者は神の命令の忠実な執行者である。。。。自然科学的結論と一致するように、聖書の章句の真の意味を見出すことは注釈者の任務である」と述べたと本書に記されています。ローマ教皇もこの見解を支持し、進化論については身体の起源として否定せず、霊魂は神によって創造されると信じるよう教えているようです。

 重要な物理法則を発見したニュートンは宇宙が物理法則に従って創られたのであれば、その物理法則を創ったのは「神」と信じていたようです。アインシュタインはダーウィンの進化論を知って、聖書の記述を信じさせようとする教えに反感を感じていたとのことです。自身が完成させた一般相対性理論とアインシュタイン方程式によって予測された宇宙の膨張や収縮を否定するために「宇宙項」を加えた方程式を作りましたが、「定常宇宙」という先入観にとらわれていたようです。カトリックの司祭であったルメートルは宇宙項なしで計算して「宇宙は膨張している」という結論を導き、時間を戻せば「宇宙の卵」である原子よりも小さな粒子から始まる「原始的原子の仮説(膨張宇宙論)」を発見したそうです。銀河の動く速度が距離に比例していることが観測され、宇宙の膨張が証明されて「ビッグバン理論」となり、アインシュタインも宇宙項を「わが生涯における最大の過ち」と悔やんだと本書に紹介されています。「ビッグバン理論」は聖書の「創世記」に記述されている「神は『光あれ』と言われた。すると光があった」という「天地創造」の考え方に都合がよく、教会は「原始的原子」を創ったのが神としたようです。聖書の教えに反感を持っていたアインシュタインは自然法則を創ったものとして「間違いなく神を信じていました」と著者は言います。

 無神論者と公言していたホーキング博士は宇宙の始まりを否定するために虚数で記述される「虚時間宇宙」というアイデアを考え出しました。虚時間宇宙は証明されていませんが、「物質を究極まで小さくしたものは粒子でなく長さがある『ひも』であるとする」「超弦理論」で重力を量子化する研究が、宇宙を量子で考えビッグバン以前の宇宙を証明することにつながるかもしれないことが本書に記されています。科学者の神についての考え方が本書の主題ですが、地動説から始まって現在の宇宙物理学につながる物理学の歴史の一端も知ることができて、興味深く読むことができました。

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