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巨人の箱庭 平壌ワンダーランド

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)という国家について平壌の建築を中心に考察した本で、建築物だけでなく絵画やポスターなどの豊富な写真も掲載されていて、マスコミ報道ではわからない北朝鮮の一面が垣間見れるものとなっています。

 著者によると「平壌にはロシア構成主義建築による人口250万人の都市が形成されている」とのことです。構成主義建築はロシア革命期の建築で当時の新素材、コンクリート、鉄骨、ガラスなどを使って装飾性を排除した幾何学的な形態を特徴とする建築のようです。建国の父、金日成は抗日運動からソ連軍の支配下に入り大尉にまで昇進しました。戦後、金日成はソ連に統治された北朝鮮の指導者となり、スターリンの影響下で建国したため平壌にはロシア式の都市ができたようです。ロシアはヨーロッパですから、平壌にパリをモデルとした凱旋門があるのも、納得できます。

 朝鮮戦争、東西冷戦、中ソ対立などの世界情勢で、北朝鮮は外交により中ソ両国から援助を引き出すのが大きな産業となっていたようです。自然災害によって国家が維持できないほどに疲弊した金正日時代に、「先軍政治」により治安維持につとめ、平壌の内と外を分ける北朝鮮国内の国境線「平壌ライン」を引いて体制を維持したようです。日本でも都市と地方の格差是正が問題となっていますが、物理的なラインで警備して移動を制限する「国境」まで作られたのでは、その外に置かれた人たちの激しい怒りを買ったのではないかと思います。著者によると平壌へ入るより中朝国境を超える方が容易なため、生活できなくなった平壌の外の市民は平壌流入や体制批判よりも脱北を選んでいるとのことです。北朝鮮は国内に国境がある特殊な国に見えますが、日本でも沖縄への在日米軍基地の集中を考えると国内に見えないラインを引いていると言えるかもしれません。

 北朝鮮が共産主義から「主体思想」による独自の体制に移行したため、金正恩へと三代続く「金王朝」による支配体制が完成したようです。被支配層の平壌市民は、生まれた時からそれなりに安定した生活ができる世代に交代したため、支配、被支配の構造が安定し、指導者が若くても安定した体制が維持できているようです。

 著者はファンキー末吉氏と共に平壌の高等中学校の音楽教室でロックを教えるプロジェクトを10年続けたとのことで、そのプロジェクトに参加した平壌の女子高生9人の写真も掲載されています。

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