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恐怖を知らない人たち FEAR FACTOR

 本書は米国の心理学者が記した「The Fear Factor: How One Emotion Connects Altruists, Psychopaths, and Everyone In-Between」の訳書です。Psychopath(サイコパス)は近年マスコミでも犯罪心理学などで耳にすることが増えましたが、Altruistは耳慣れない言葉です。Egoistの対義語で利他主義者と訳されます。

 「サイコパシーは発達障害の一つ」でサイコパスの大人の数だけサイコパスの子どももいたということになりますが、サイコパスと呼ばれることの負の影響を考えると子供をサイコパスと絶対呼んではいけないと著者は言います。サイコパスはサイコパシーチェックリスト改訂版(PCL-R)のスコア30点以上(最大40点)で判定され、10歳以上の子ども用の青少年版(PCL:YV)もあるそうです。PCL:YVで高い点数を示してもサイコパスの大人にならない人も多く、PCL:YVには判定基準はないそうです。著者はサイコパシーの症状があると思われる子供のボランティアを集めてfMRIで脳機能を解析し、人のおびえた表情を見た時に起こる偏桃体の活性化がなく無表情の顔を見た時と変わらなかったことを明らかにしています。被験者からの聞き取りでは、表情から相手がおびえていると認識する能力が低いようです。

 個々人の偏桃体の機能にはばらつきがあり、正規分布するとすれば、サイコパスの対極にある人たちも存在するはずです。著者はそれが利他主義者で、しばしば危険を顧みずに勇敢な行動をする彼らは、恐怖を感じないのではなく、他者への共感が強いために直感的に利他行動をしているようです。著者はレシピエントが誰になるか知らずに匿名で自分の腎臓の一つを提供した「利他的な腎臓ドナー」を利他主義者の被験者として集めて、おびえた表情への感受性が高いことを明らかにしています。利他行動の起源として、人間以外の哺乳類でも見られる他人の子どもを育てるアロマザリング(allomothering)について考察しています。餌報酬でレバー押しを学習した母ラットで、出産後、子どもを引き離して、レバーを押すと餌ではなく子供のラットが目の前に現れるようにしたところ、現れた子供を巣に運ぶ行動が見られ、別の母ラットの子どもでも同じように運んだという実験があるようです。研究者が実験を打ち切るまで3時間行動は続けられたそうです。おびえた表情は赤ちゃんの顔と特徴が似ていて、その特徴が共感のシグナルになると考察しています。また、オキシトシンがおびえた表情を認識する感受性を増加させるという研究もあるようです。

 著者は本書の大半をサイコパスではなく利他主義者について記していて、「他者の苦しみへの感受性は高いが、彼らの憐みや思いやりの能力は、大半の人間に潜んでいる同じ神経メカニズムが関わっている」と述べています。

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