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大統領の疑惑

 原題は「TRUTH The Press, the President, and the Privilege of Power」で、イラク戦争を起こしたブッシュ大統領の軍歴に関する疑惑をテレビニュースで報じてCBSを解雇された元プロデューサーが事件の真相を記したものです。「Truth」(邦題:ニュースの真相)というタイトルで映画にもなりました。著者Mary MapesはCBSニュースの看板番組だった「60 minutes」の姉妹番組である「60 minutes供廚離廛蹈妊紂璽機爾任靴拭ピーボディ賞を受賞したアブグレイブ刑務所の虐待についての話、ブッシュ大統領がテキサス州知事時代に約150の死刑を承認し「知事としてアメリカの近代史上、もっとも多い」ことなど、自身が手掛けたいくつかの「ストーリー」についても記されていますが、ブッシュの軍歴の疑惑については、その真相と番組で報じてからCBSを追われるまでの顛末が詳しく記されています。疑惑はベトナム戦争当時、徴兵によって戦地へ派遣されることを逃れるため有力者の口利きでテキサス州兵に採用され、訓練を受けてパイロットになった後、上官の命令に反して健康診断を受診せず航空機への搭乗を禁じられ、軍務を離れて選挙を手伝い、その後除隊となるというもので、他のジャーナリストも追いかけていたものでした。Maryは様々な取材や公開請求で入手した公文書などで核心に迫り、州兵当時のブッシュの上官のメモのコピーを入手して、疑惑の真相を報じました。ブッシュ大統領にとって決定的なスキャンダルとなるはずでしたが、ブッシュ擁護のブロガーによるメモは偽造だとするキャンペーンによってCBSは追い詰められ、経営陣は社員ではなく会社を守るために番組プロデューサーなど関係者を切り捨てる戦略に出ました。ブロガーがメモを偽造とした根拠はメモの中身の正否ではなく、フォントの間隔やthの上付き文字などが当時のタイプと一致しないとするもので、本書によるとすべて事実とは異なり、明確に反論できる虚偽の主張のようです。著者の入手したメモもコピーで、もともとメモが本物であるかどうかの鑑定は不可能で、CBSはメモが内容的、外観的に事実と矛盾しないことを鑑定して報じたもので、報道は適切と思われます。しかし、多くの人が事実か嘘かに関係なくブロガーの主張を信じたため、新聞社などのマスコミもCBSの番組を非難するようになり、CBSは調査委員会を作って番組を不適切と認定して番組関係者を切捨てました。

 トランプ大統領は自身に都合の悪い事実を伝えるマスコミをフェイクニュースと非難していますが、大統領自身ではないとしても都合の悪い事実を報じるマスコミをフェイクとして攻撃するのは前例があったようです。メモのフォントのようないろいろと解釈できるような些末な部分を声高に主張して疑惑全体を否定する手法は、日本で南京事件や従軍慰安婦問題を否定するような主張に共通しているように思いました。報道の自由を重んじる米国で、ブッシュの軍歴疑惑では多くのマスコミがCBSのジャーナリストを擁護しなかったことは驚きです。CBSの親会社であるバイアコムはジャーナリズムより利益を優先して社員を守らず、事件を視聴率の取れない報道番組を減らす機会としており、ジャーナリズムの危機を感じました。

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