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父と私

 田中真紀子氏が父、田中角栄氏と自身について記した本です。脳梗塞で倒れた後の田中派後継を争い目白の田中邸を訪れた自民党議員の暗躍や、金大中氏が東京で拉致された日に「金」と名乗る人から角栄氏にかかってきた電話を取り次いだ真紀子氏が「命、命だけは絶対にダメだぞ!」と電話で角栄氏が話していたのを聞いたことなど、興味深い裏話が紹介されています。

 総理の外遊に夫人(ファーストレディ)の同伴はつきものですが、角栄氏は夫人ではなく娘の真紀子氏を同伴していました。夫人が病弱なため同伴できないと思っていましたが、真紀子氏はその理由を、「母は。。。。重い中耳炎を患って補聴器が手放せない状態。。。もともと控えめで華やかな場に出ることを好まなかった母は、。。。和服を着ていたこともあって着替えに時間がかかった。そうした事情から、。。。アメリカ留学の経験もあり、。。。私が自然の成り行きとして母の代役を務めることが多くなった。」と記しています。これだと、夫人より娘がファーストレディの任にふさわしかったように読めますが、「『マキ子には世界中を見せてあげる。それがお父さんの夢だ』と言い続けていた」とも記していますので、案外、親ばか的な理由があったのかもしれません。しかし、中国との国交正常化交渉のために訪中する際に角栄氏は「。。。今回の訪中だけは別ものだ。中共という国が。。。何をしようとしているのか何一つとして正確な情報はない。しかも国内においては台湾派、親米派による猛烈な反対がある。。。いつ撃たれるか、毒を盛られるかわからぬ状況で出発をする。。。」と言って、真紀子氏を伴わずに出かけたそうです。日本の国益のために命懸けで外交交渉に臨む政治家の覚悟を見た気がします。

 真紀子氏の夫、田中直紀氏は田中家の力で代議士になって真紀子氏の尻にひかれている頼りないイメージがありましたが、本書によると、角栄氏が脳梗塞で倒れて後継争いで大変な時に、「新米代議士」であった直紀氏が「父の地元の支持者の方々や国会議員、マスコミ等、対外的スポークスマン役の全てを秘書の方々の協力を得て、引き受けてくれた。」と真紀子氏にとって頼もしい主人であったことを知りました。

 父は偉大な政治家で先見の明のある政策を実行してきたとの考えで記載されていますので、ロッキード事件については疑問を投げかけ、日本列島改造論につながったガソリン税で道路をつくる政策などについては高く評価しています。しかし、「道路特定財源であるガソリン税に対して大蔵省は、『税金を特定の目的に使う特定財源は政府の予算編成権を拘束する。憲法違反だ』と反発したそうですが、ガソリン税で無駄な道路がたくさん作られた現実を見ると、憲法違反かどうかは別にして、当時の大蔵省の懸念が当たったことになります。角栄氏が金権政治と批判されたことについては答えていませんが、庭にいた鯉の話や何人もの秘書や書生がいた話など、随所に大金持ちであったことが分かるエピソードが載っています。その暮らしがどうやって維持されていたのか。本書で真紀子氏はパパラッチや怪しげな秘書など田中角栄氏を利用して金儲けをしようとした輩を非難していますが、庶民感覚では政治家としての角栄氏の功罪の「罪」の方も意識してしまいます。

 真紀子氏が外務大臣として外務省を改革しようとして抵抗にあい挫折した議員時代のことや、現在のトランプ政権や安倍政権に対する懸念なども記されていますが、こちらは共感できました。

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