痛風予備軍の投薬治療

 血液検査などで検査値の異常があれば自覚症状がなくても投薬治療を始めることが有効なことがあります。高血糖や高コレステロール血症などは代表的なものでしょう。高血糖の状態を放置し続ければ糖尿病を発症し、いずれ抹消神経障害や失明、壊疽など回復できない重篤な症状となる確率は非常に高く、すぐに投薬治療を始めることに異論はありません。高コレステロール血症は高血糖ほど重篤な症状に至る確率は高くないと思いますが、動脈硬化による脳梗塞など重篤な症状に前兆的な自覚症状はありませんから、検査値の異常で予防的に投薬することは有益でしょう。

 高尿酸血症でも予防的に投薬治療されていることをブログ記事で知りました。腎障害を有する無症候性高尿酸血症に腎機能の低下抑制のため尿酸値を下げる投薬治療がされているようです。尿酸生成を抑制する薬剤として痛風治療に使われるアロプリノールは100%腎排泄で腎障害患者には使いにくく、主に肝臓で代謝されるフェブキソスタットが無症候性高尿酸血症に多く処方されてきたようです。ところが、フェブキソスタットとアロプリノールの心血管イベントへの影響を比較する二重盲検のランダム化対照試験の結果、心血管死亡と総死亡がフェブキソスタット群で有意に高かったと米国で報告され、FDAがフェブキソスタットはアロプリノールより死亡リスクが高いと警告したことが問題となっているようです。腎障害のある患者にアロプリノールを投薬し腎機能への負荷を増しては腎機能低下の抑制に逆効果ですから、この試験結果をもって単純にフェブキソスタットからアロプリノールへ処方変更すれば良いとはならないようです。無症候性高尿酸血症では食事療法などで尿酸値を下げることから初め、投薬治療は先延ばしにすることもありうるのかもしれません。

at 07:26, kameriki, 医学

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早死にの開業医

 「医者の不養生」などと言われますが、岐阜県保険医協会の調査結果は衝撃的です。2008〜17年の10年間に、岐阜県保険医協会を死亡退会した85人の死亡時年齢は平均70.8歳で、厚労省統計の死亡時平均年齢(2015年)、男性77.7歳、女性84.3歳と明らかな差があったとのことでした。85人の内訳は、医科会員が60人、歯科会員が25人、男性が76人、女性が9人とのこと。死因など差が生じた原因の検討はしていませんが、「医者の不養生」よりも過労が原因と考えるほうが確からしく思います。

 過労死ラインまでの長時間勤務を認める「勤務医の働き方改革」の議論が問題となっていますが、開業医の過労についても調査が必要ではないでしょうか。

at 07:46, kameriki, 医学

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火葬場で予想外の被曝

 ネットの記事で火葬場の作業員の尿からテクネチウムTc99mが検出されたという論文が紹介されていました。ルテチウム標識ソマトスタチンアナログ(Lu-177- DOTA-TATE)の投与による治療を受けた直後に死亡した患者を火葬し被曝したようです。ルテチウムLu-177は検出されなかったけれど微量のテクネチウムTc99mが検出されたとのことです。Lu-177のベータ線は軟部組織で飛距離が1.5mm、半減期6.65日で、危険性は低いけれど、論文の著者は放射性医薬品使用患者の死後も規制の必要性を述べているようです。

 規制するほどの危険性はないのかもしれませんが、予想外のところで被曝するのは気持ち悪いものです。情報が正しく知らされていなければ、風評にもつながります。

at 07:59, kameriki, 医学

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健康保険制度への外圧

 米国研究製薬工業協会(PhRMA)のパトリック・ジョンソン在日執行委員会委員長(日本イーライリリー社長)が2月7日、都内の記者会見で日本の薬価引き下げと費用対効果の評価による社会保障費抑制策を批判したと報道されました。薬価を下げられれば利益が減少する製薬会社の社長が批判するのは当たり前で、批判されるのは政策が有効な証です。問題は、政府がどこまでこの批判に耐えられるかです。米国でも民間団体からの要求であればまだ跳ね返せるかもしれませんが、この団体が米国政府を動かして政府による対日要求となると、日本政府が抵抗できるのか怪しくなります。トランプ大統領の言いなりになっている安倍首相が日本の健康保険制度を維持できるのかとても心配です。

at 09:11, kameriki, 医学

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インフルエンザシーズン到来

 富山でも1週間のインフルエンザ患者報告数が平均1.0人を超え、流行期に入ったとのことです。私ものどの痛みと、くしゃみ、鼻水の症状があります。高熱は出ていませんので、インフルエンザではなく、鼻風邪の類かと思いますが、インフルエンザの可能性もあります。ウイルスの種類が違いますから、インフルエンザ用の抗ウイルス薬は鼻風邪には効きませんが、感染予防の基本は同じ手洗いです。週末には雪との予報、部屋を暖かくして、体を休めて回復に努めたいと思います。皆さんもお気を付けください。

at 07:14, kameriki, 医学

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身体拘束の遠因

 外来で統合失調症の治療をしていた患者の自殺について、遺族が精神科開業医の責任を主張して損害賠償を請求した裁判で、一審は請求を棄却しましたが、二審の東京高裁は開業医の注意義務違反を認め約1250万円の支払いを命じたとのブログ記事を読みました。二審判決が出されたのは2017年9月28日で医師側は最高裁に控訴したとのことです。ブログ記事は二審判決について日本精神神経科診療所協会の声明文など、医療側からの懸念を伝えています。

 多くの自殺の背景にうつ病があると言われるように精神科医療で自殺念慮は珍しいことではありません。二審判決は自殺念慮のある患者に入院などの適切な自殺防止措置を取らなかったことを過失として認めたようですが、このような判決は精神科医療の現場を萎縮させるという懸念はよくわかります。入院させて24時間監視する、または自殺出来ないように身体拘束すれば、自殺は防げるとしてもそのような医療を患者やその家族は望んでいるでしょうか。裁判官は判決の影響を十分考慮して判断してほしく思います。

at 07:07, kameriki, 医学

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精神科身体拘束の衝撃

 長期の入院隔離が多く、欧米と比較して日本の精神科医療が遅れていると言われていましたが、入院で例外的措置のはずの身体拘束が頻繁に行われているという9/7放送のEテレの番組に衝撃を覚えました。番組には身体拘束されたという多くの当事者からの声と、現場は人手不足で拘束せざるを得ないという看護師の声が寄せられていました。コメンテーターとして出演していた精神科医で筑波大教授の斉藤環氏はどうしても身体拘束が必要なことはあるが、必要最小限度とするべきで一回で最長4時間に制限し、拘束中は必ずスタッフが付き添うべきと言っていました。しかし、実際は平均3か月に及ぶ身体拘束が行われ、拘束は増えているとのことでした。拘束に地域差があったり、措置入院よりも通常入院の方が拘束が多いなど身体拘束の適用基準が不適切に運用されていることが指摘されていました。

 精神科ではありませんが、脳出血からの回復期に栄養補給のための胃管を鼻から挿入した状態でリハビリ病院に転院し、胃管を引き抜かないように麻痺のない手を拘束されて、見舞いに行った私に拘束を解いてくれるよう懇願していた母の顔は忘れられません。身体の一部であっても拘束がどれだけ苦痛で尊厳を傷つける行為であるか、実感しました。

 双極性障害で入院して身体拘束され、10日間の拘束で生じた血栓による肺塞栓症で死亡したとみられるニュージーランド人男性の遺族も番組で紹介されていました。病院は医療行為が適切であったと主張しているようですが、身体拘束が事実であれば過失致死に相当する医療事故として検証されるべきではないでしょうか。

at 07:56, kameriki, 医学

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O157の恐怖再び

 O157の食中毒が再びクローズアップされています。O157と言えば、「焼肉酒家えびす」の食中毒事件ですが、この時は生肉のユッケについていたO157が原因でしたから、「肉は生で食べない」という大方の人に受け入れ可能な方法で予防が可能でした。しかし、惣菜店のポテトサラダが原因となれば、話は別です。加熱調理しないで食べる総菜は食べないという予防が可能かもしれませんが、販売業者の不適切な取り扱いがあれば、あらゆる市販の総菜や弁当でもO157に汚染される可能性があります。リスクがあるものの利用をすべて排除するのは、交通事故を恐れて自動車を排除するのと同様に、著しく利便性を損なうことになります。

 O157が付着した食品を摂取しても症状が現れないことも多いものと思われます。疲労などで体調が悪く生体の防御機構が弱っているときは、O157摂取による症状が現れやすく、摂取したO157もしくはO157が産生するベロ毒素の量が多ければ、より重篤な症状となるリスクが高くなります。その意味では、体調が悪いときはO157汚染のリスクがある総菜を加熱せずに食べることは避けるとか、食品にO157が付着してもその中で増殖するのを防ぐために冷蔵庫などで食品を低温に保つくらいしか防御策はなさそうです。

 

at 07:36, kameriki, 医学

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SFTSにご用心

 マダニが媒介するウイルス感染症重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome,SFTS)、2013年に国内で死亡した患者が初めて確認され、話題になりました。それ以来、名前を聞かなくなっていましたが、昨年SFTSで亡くなった50代の女性が猫にかまれて感染したとみられることが7月24日に報道されました。この報道によると毎年60人前後の感染報告があり、約2割が亡くなっているとのことです。話題にならなくなっても無くなったわけではなく、危険な感染症として定着しているようです。

 これまでは予防手段として、草むらでは長袖などを着て肌の露出を抑えてマダニにかまれないようにすることが重要とされていましたが、猫などの動物が媒介するリスクにも注意する必要がありそうです。

at 08:34, kameriki, 医学

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高安動脈炎

 アクテムラ(トシリズマブ)の承認を伝える記事で、追加された適応症に高安動脈炎、巨細胞性動脈炎とありました。後者は読めますが、医学用語としては見慣れない前者の単語に戸惑いました。ネットで調べると、「高安」は「たかやす」と読み、病気の発見者、つまり、新大関と同じ人名ということのようです。

 高安動脈炎は難病に指定されていて、難病情報センターのホームページによると「大動脈やそこから分かれている大きな血管に炎症が生じ、血管が狭窄したり閉塞したりして、脳、心臓、腎臓といった重要な臓器に障害を与えたり、手足が疲れやすくなったりする原因不明の血管炎です。炎症が生じた血管の部位によって様々な症状がでます。わが国の高安右人教授が1908年に初めて報告しましたので高安動脈炎と呼ばれています。かつて大動脈炎症候群とも言われましたが、病変は大動脈以外の全身に生ずることがあるため、現在は高安動脈炎と呼んでいます。」とのことです。原因不明の炎症ですが、ステロイドなどの治療で比較的良い予後が得られているようです。血管の炎症が早く見つけられれば、予後も良くなることが期待され、早期発見のためにも新大関の活躍により「高安動脈炎」の知名度が上がれば良いと思います。

at 06:33, kameriki, 医学

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