中国経済成長の罠 金融危機とバランスシート不況

 日本人の研究者が中国経済の現状を分析した書籍で、著者は中国で「バブル崩壊が起こる可能性は40%」と言います。本書は2018年5月の出版ですが、米中貿易摩擦などの経済対立で中国経済の不確実性が増していますので、習近平政権の経済運営次第でバブル崩壊確率はさらに高くなるかもしれません。

 本書には日本のバブル経済の分析についても記されています。その発生と崩壊について中国共産党指導部はよく研究し、日本の轍を踏まないように最善の注意を払っていると言われていますが、分かっていても実行できるとは限りません。日本のバブルでは日銀の金融引き締め政策が遅れて過度の金融緩和経済によって実需以上に市中にお金があふれ土地や株、債券などの高騰でバブルが形成されていったようですが、中国では企業が低利で集めた資金を銀行を介して不動産開発などの企業に投じてバブルが生じているようです。リーマンショック時のサブプライムローンのように世界中の銀行や投資家に債権が広まっているのと異なり、中国企業の債権は中国国内に留まっていてバブルが崩壊しても他国の金融システムに直接影響することは少ないかもしれません。しかし、中国経済の規模の大きさを考えれば、中国経済のバブル崩壊による間接的な影響は少なくないでしょう。本書に記されている中国国有企業の実態や中国経済における非効率な国有企業の存在感の大きさを知ると、悲観的になります。日本の指導者はその時に備える必要があるでしょう。

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コンパクトシティ実践ガイド

 コンパクトシティの考え方、各地の事例、国交省の発出した「健康・医療・福祉のまちづくりの推進ガイドライン」と題した技術的助言などの参考資料が掲載されています。

 行政に携わる人には分かるのかもしれませんが、素人の私には読んでも良く分からず「実践ガイド」とはなりません。各地の事例はすべて成功例として記載されているものと思いますが、「まちづくり」として本当に成功しているのか検証が不十分と感じました。

 富山市は市長がコンパクトシティを標榜していますが、本書には富山市の事例として統廃合で生じた中心市街地にあった小学校の跡地を利用して公設民営で「角川介護予防センター」を設置した事例と「まちなかへの外出促進」を目的として設置されたイベントスペース「グランドプラザ」が紹介されています。

 巻末の参考資料に病院、調剤薬局、社会福祉施設を設置する場合の国交省と厚労省の支援制度が掲載されています。おそらく同じ施設を対象にしていると思われる様々な名称の補助事業が実施されているように見えます。どの補助事業に応募すれば良いのか素人には良く分からない、複雑な補助金の実例のように感じました。

コンパクトシティ実践ガイド―医療・福祉・子育て連携! ―

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コンパクトシティ実践ガイド [ コンパクトシティ研究会 ]

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ホモ・デウス 下

 著者はこの本の結論として、「1 科学は一つの包括的な教義に収斂しつつある。生き物はアルゴリズムであり、生命はデータ処理であるという教義だ。2 知能は意識から分離しつつある。3 意識を持たないものの高度な知能を備えたアルゴリズムが間もなく、私たちが自分自身を知るよりもよく私たちのことを知るようになるかもしれない。」とサピエンスの歴史を考察しています。この考え方は本書でデータ至上主義もしくはデータ教と呼ばれています。著者はこの「三つの動き」のそれぞれに対して、「生き物はアルゴリズム、生命はデータ処理にすぎないか? 知能と意識のどちらが価値があるか? 3が起こったら社会や政治や日常生活はどうなるか」といった問いも投げかけて本書は終了しています。

 「人間至上主義」では、神ではなく「汝の感情に耳を傾けよ」と命じていたのが「データ至上主義」になれば「アルゴリズムに耳を傾けよ」になると言います。そして、「情報の自由」を擁護しますが、「表現の自由」とは違います。表現の自由は人間に与えられ好きなことを言うことも何も言わないことも権利として保護されますが、情報の自由は情報に権利が与えられ「人間がデータを所有したりデータの移動を制限したりする権利よりも、情報が自由に拡がる権利を優先する」と言います。人類を単一のデータ処理システムと解釈すれば一人の人間はシステムのチップ(プロセッサー)で人類の歴史は「1 プロセッサーの数を増やす。2 プロセッサーの種類を増やす。3 プロセッサー間の接続を増やす。4 既存の接続に沿って動く自由を増やす。」の4段階でシステムの効率を高めた過程と捉えられるようです。政治制度もデータ処理システムで民主主義は分散処理、独裁制は集中処理、20世紀後期の環境が分散処理を優位にしたが、21世紀にデータ処理の条件が変化して分散処理つまり民主主義の優位性が薄れるかもしれないと言います。

 著者はデータ至上主義とならんで人間至上主義の価値観に固執しテクノロジーを使って優れた人間ホモ・デウスに進化させるとする「テクノ人間至上主義」についても紹介しています。この思想は巨大な開発途上国のエリート層に、大衆医療を提供して平均的な健康水準を引き上げるより「一握りのアップグレードされた超人」を作り出す方に投資するよう誘惑するかもしれません。

 本書では人間至上主義の危機について様々な例から考察しています。難民問題の考察を例示し、共通の絆を持っている集団内でしか民主的な選挙は機能せず、「選挙は、基本的な事柄ですでに合意している人々の間での意見の相違を処理するための方法」と言います。進化論的な人間至上主義では人間が戦争を経験するのは有益で不可欠、戦争で自然選択が発揮されると主張します。

 「物語る自己」にはピークの瞬間と最後の瞬間を思い出し両者の平均で経験を査定する「ピーク・エンドの法則」に従うと、心理学の実験を紹介しています。痛い注射の後にお菓子をもらえば小児科での経験は痛手にならず、出産の最後と産後数日コルチゾールとベータエンドルフィンの分泌で多幸感が得られれば耐え難い出産の苦痛は二度と経験したくない痛みとはならないよう進化したようです。「自己は数学的パターン以外の何物でもないと主張する」「定量化された自己(quantified self)」運動ではバイオメトリックデータを集めてアルゴリズムに分析させ、数値で自己を認識しようとするそうです。アームバンドで心拍数、発汗量、性行為とオーガズムの持続時間、消費カロリーなどのデータを集めて性行為を数字で評価するBedpostが紹介されています。

 本書には現代社会と未来を考える上で多くの示唆に富む歴史的な観点が記されていますが、資源には原材料とエネルギーと知識の三種類があって原材料とエネルギーは有限だけど知識は増え続けるという指摘はなるほどと思いました。

ホモ・デウス 下: テクノロジーとサピエンスの未来

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ホモ・デウス 下 テクノロジーとサピエンスの未来 [ ユヴァル・ノア・ハラリ ]

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ホモ・デウス 上

 「サピエンス全史」で話題となった歴史学者の著書で、上・下、二巻の上巻を紹介します。「デウス」は神の意味で、神の領域に踏み出そうとしているサピエンスの歴史と未来を記しています。

 人類は飢饉、疫病、戦争という三大敵に対する対処方法を獲得し、21世紀は新たな課題に取り組む可能性が高いと著者は言います。第一は不死、そして幸福を追求することで「自らを神にアップグレードしようとしている」とのことです。幸福と言えばベンサムの「最大多数の最大幸福」ですが、米国の独立宣言で三つの人権として確立した「生命と自由と幸福追求の権利」の幸福は国家が保証するものではなく、国家の権力を制限して個人の幸福追求に国家が干渉しないことを権利として認めたようです。著者はそれが、「いつの間にか、幸福に対する権利に変わってしまった」と言います。

 著者はホモ・サピエンスと他の生物との違いを歴史的に考察し、人類は多くの個体が柔軟に協力する能力で他の種を圧倒し「世界を征服した」と考えているようです。社会的昆虫をはじめ、他の個体に協力する動物は人類だけではありません。大きなケージの中に小さなケージを入れ、その中に閉じ込めたラットが信号を発すると、大きなケージにいるラットが小さなケージを開けて中のラットを解放する実験について紹介しています。大きなケージにチョコレートを入れると中のラットを解放してチョコレートを分け合うラットと、助けずに一人占めするラットがいたそうです(Empathy and Pro-Social Behavior in Rats Science   2011: 334, Issue 6061, pp. 1427-1430)。

 著者は宗教についても考察していますが、「宗教とは社会秩序を維持して大規模な協力体制を組織するための手段」として、霊的な物や神とは別のものとしています。宗教と霊性よりも宗教と科学の方が近いと言います。共産主義も宗教と見なせ、現代の宗教は人間至上主義ということになるようです。 

ホモ・デウス 上: テクノロジーとサピエンスの未来

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十六の墓標(上・下)

 連合赤軍指導者の一人であった永田洋子さんが自身の生い立ちから活動履歴、逮捕までに犯した同志の殺害について記した記録です。彼女らが殺害した同志は14人ですが、著者によるとタイトルに十六とつけたのは、銃を奪おうとして1970年12月18日に上赤塚交番を襲って警官に殺害された同志1名と73年1月1日に東京拘置所で自殺した最高幹部森恒夫氏を含めて数えているそうです。

 著者は始め、革命左派に所属し逮捕されて獄中にいる指導者に従って活動していたようです。上巻では赤軍派幹部の森恒夫氏と出会って「統一赤軍」を結成し、森氏の助言に従って革命左派から脱走した2名の処刑を決定し、殺害するまでが記されています。脱走した2名の殺人も許されることではありませんが、組織の秘密を守るためという理由は理解しやすいものです。しかし、下巻に記されている同志14名の殺害は「総括」という呼び名で行った理不尽な暴行、虐待が死ぬまで繰り返されたもので、本書に詳細に記されていても理解できる殺害の理由はありません。殺害された一人は妊娠中で胎児も亡くなっていますから、本来なら墓標は十七となります。下巻に序文を要請された瀬戸内晴美さんは「生理的にまいってしまって、ちょっと下巻の処刑の場をすべて読み通す勇気が出てきません」と序文の執筆を断ったことが「編集者への手紙」として記されています。本書によると「総括」要求は最高指導者の森氏から出され、永田さん他指導部が賛成し、永田さんから被指導部の同志にも伝えられ集団で暴行が加えられたようです。集団によるいじめと同じで、多くの人は自分が次のターゲットにされるのを恐れて、暴行する側に加わっていたように見えます。

 「統一赤軍」の名称は、獄中にいた革命左派の指導者の意見で「連合赤軍」に変更されたようです。「連合赤軍」と言えば、浅間山荘事件が思い出されますが、これは妙義山の山岳アジトに迫ってきた警察から逃れ浅間山荘に立てこもったメンバーによって引き起こされた銃撃戦で、永田、森両氏は妙義山で既に逮捕されていて浅間山荘事件には関与していなかったようです。同志の殺害は浅間山荘事件の前に起こっていたことで、立てこもりの中で行われたことではありませんでした。

十六の墓標 上―炎と死の青春

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十六の墓標(上) 炎と死の青春 [ 永田洋子 ]

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昆虫の行動の仕組み 小さな脳による制御とロボットへの応用

 動物行動のアルゴリズムに興味があるという研究者によって、「昆虫の行動の仕組み」について記された本です。目標物の方向に眼や顔、頭、体などを向ける行動を定位行動と呼び、視覚によって起こる定位行動を視覚定位と称しています。視野の位置によって解像度と感度が異なり、両者はトレードオフの関係で、よく見ようとすれば、対象物が解像度の高い視野に来るように眼の位置を変える必要があるようです。人でも昆虫でも起こりますが、著者はカマキリが頭部を動かす実験を紹介しています。本論ではありませんが、カマキリについて積雪量を予測して大雪の予測の年は雪に埋もれないように高い位置に産卵するという話について間違いと指摘しています。カマキリの卵は雪に3か月埋もれても孵化する耐雪性があり、埋もれていたほうが鳥に食べられずに済むため好都合のようです。雪解け水によって水浸しになる被害はあっても損失は2割程度で問題とならないそうです。

 著者は「道教え」と言われる、ハンミョウの人の前を進んでは止まる繰り返しの行動を視覚定位で説明しています。ハンミョウは複眼で地上を徘徊しながら昆虫を探して餌としているとのことで、地表すれすれを歩いているため自身が動いているときは地面の画像などが動いて餌となる昆虫の動きと区別できなくなるため、立ち止まって餌の動きを確認して再度追尾する行動が「道教え」と見えているようです。対象物を解像度の高い領域でとらえて背景をノイズとして見やすくする視覚定位と同様に、立ち止まって動くターゲットを捉えやすくしようとする行動の原理を説明できるようです。ハンミョウは死んでいる昆虫も餌とするようですが、動く昆虫がターゲットとなれば、追いかける際に最善の行動は「道教え」となるのでしょう。

 動いている昆虫を捉えるためにはターゲットの進路を予測してターゲットの到達時刻にその位置に到達して捉える必要があります。その追尾行動をインターセプトと言いますが、トンボのインターセプトでトンボはターゲットに向かって進むのではなく「自分の進行方向を基準としたターゲットの方向を常に一定に保つこと」が最短距離で、実際にそうしているようです。この場合ターゲットから見たトンボの位置がほとんど変わらず、トンボが近づいていることに気づきにくいという、トンボから見た利点があるようです。

 昆虫は胸部神経節が歩行や飛翔の制御を行っていると考えられ、頭を切り落とされたカマキリも普通に歩くそうです。

 最終章で昆虫の研究の意義について昆虫の運動のアルゴリズムを利用したロボットについて紹介していますが、これまでの昆虫研究の成果として警告色にも言及されています。警告色は毒を持つ生き物が派手な体色で捕食者が識別できるようにアピールする体色のことで、昆虫の警告色では捕食者として鳥だけが想定されていましたが、近年はカマキリの重要性も指摘されているとのことです。

昆虫の行動の仕組み: 小さな脳による制御とロボットへの応用 (共立スマートセレクション)

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昆虫の行動の仕組み 小さな脳による制御とロボットへの応用 (共立スマートセレクション 13) [ 山脇 兆史 ]

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新版 うつ病をなおす

 基礎研究から臨床まで長年うつ病の治療に携わってきた野村総一郎先生による、うつ病の症状と治療について記された本です。うつ病の症状については、著者の臨床経験から典型的な患者を仮定して分かりやすく説明されています。典型的なうつ病(メランコリー型うつ病)だけではなく、マスコミでいう「新型うつ病」本書では「現代うつ病」と呼んでいる非定型のうつ病についても記されています。現代うつ病はうつ病の症状で仕事に支障をきたしたり、会社に行けなくなったりしながら、仕事以外の趣味などでは元気なことも多く、病気ではなく怠けているだけではないかとの指摘もあります。しかし、著者は現代うつ病とメランコリー型うつ病は同じタイプのうつ病で日本の文化の変化によって症状の現れ方が変わっただけと考えているようです。ゆとり教育と成果主義という相いれない価値観にさらされ、学校で甘やかされ会社で厳しく扱われる若者の適応形式として「現代うつ病」の症状が現れていると考えているようです。

 鑑別が必要な疾患として双極性障害と適応障害が記されています。ストレスに適応できないのが適応障害ですが、精神疾患の診断マニュアルであるDSM-Vによると「他の精神疾患の病名もつくような場合は、そちらを優先して、適応障害とはしない」という基準があり、うつ病と診断されれば適応障害とはならないようです。

 治療については、抗うつ薬の使い方だけではなく、認知行動療法などについても記されています。専門的な内容も分かりやすく記されていて、うつ病を知りたい人にお勧めします。

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新版 うつ病をなおす (講談社現代新書) [ 野村 総一郎 ]

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生物学者、地球を行く

 様々な環境で生きる生物についてそれぞれの研究者が紹介しています。生物の解説だけでなく、タイトルにあるように、その場所まで行くことが重視され、一般の人がそこに行く際の難易度まで記載されています。

 生態系は、多くは太陽光をエネルギーとする光合成により植物が有機物を合成することから始まる食物連鎖に支えられていますが、太陽光が届かない深海底に化学物質をエネルギーとする「化学合成生態系」が存在するそうです。海底火山から供給される硫化水素やメタンが酸化するときのエネルギーで海水中の二酸化炭素から有機物を合成する細菌が生存し、化学合成生態系が成り立つようです。光が届かないのは深海底だけではなく、森の地面(林床)でも鬱蒼とした茂みで遮られて太陽光が殆ど届かないようです。わずかな光で光合成をする植物もいますが、光合成を止めて菌類から養分を略奪する「菌従属栄養植物」が存在するそうです。光合成をしている植物の菌根共生と異なり、一方的に菌類から栄養分を得るために菌類をだまして寄生しているようです。

 本書によると熱帯雨林では数年に一度、多くの森の木々が同調して開花結実する現象がみられるそうです。結実しない年は種子の捕食者には餌が不足しますから食糧不足で捕食者の個体数は減少し、一斉開花結実した際に捕食者が食べきれず生き延びる種子が増え、これを「捕食者飽和現象」と呼ぶそうです。

 本書には動物も登場し、ボルネオ島でテングザルの反芻行動を発見した研究について紹介されています。反芻動物と言えばウシなどの偶蹄類で、テングザルは四つにくびれた複胃を持ちますが、カバやナマケモノのように複胃を持っていても反芻行動をしない動物と思われていたようで、著者の発見はなかなか信じてもらえなかったようです。50年以上前のドイツ語の文献に動物園での観察の報告があるようですが、これはチンパンジーなど大型類人猿のケージ飼育で見られる吐き戻し行動と同じ異常行動とみられ、反芻行動とは認識されていなかったとのことです。

 上記の他、極地や砂漠、宇宙など様々な環境での生物について興味深い記述が満載です。

生物学者、地球を行く―まだ知らない生きものを調べに、深海から宇宙まで

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生物学者,地球を行く まだ知らない生きものを調べに,深海から宇宙まで [ 日本生態学会 北海道地区会 ]

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あの会社はこうして潰れた

 帝国データバンク情報部で企業調査を行っていた著者が倒産した企業の個別事例を記したものについてまとめて掲載されています。掲載事例は37件あり、企業は実名で掲載されていますので、「あの企業もこの会社も倒産していたんだ」と思う例がいっぱいあります。多くの企業は再建されていますので、ホームページを見ても倒産していたことに気づいていないこともあるでしょう。

 アベノミクスで円安が進み株価が上昇して景気回復したと評価されています。自動車メーカーをはじめとする大手の輸出企業にはメリットがありましたが、円安にはデメリットもあります。物価上昇で庶民は生活が苦しくなり、輸入企業も仕入れ価格の増加で苦しんだようです。本書によると、2014年上半期(4〜9月)の輸入関連企業の倒産は前年同期比7%増の260件だったそうです。富山発祥の回転ずし「かいおう」も、円安による寿司ネタの仕入れ値上昇に苦しめられ、チェーンの急拡大による資金繰りの悪化もあって倒産したようです。

 本書には有料老人ホームの運営会社の倒産事例についても紹介されています。入居者不足と入居者死亡による保証金返還で資金繰りが悪化したようです。本書には有料老人ホームを選ぶ際の注意点として、都道府県の保健福祉局などが公表している「重要事項説明書」を確認するよう勧めています。室数と定員が分かるので、施設に入居者数を問い合わせれば入居率が計算でき、80%以上なら経営が安定している目安となるようです。介護サービスの有無や職員一人当たりの入居者数、職員の雇用状況、保証金の保全状況なども確認するのが良いようです。

あの会社はこうして潰れた 日経プレミアシリーズ

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あの会社はこうして潰れた (日経プレミアシリーズ) [ 帝国データバンク情報部 藤森徹 ]

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米国人博士、大阪で主婦になる。

 日本人男性と結婚し、大阪在住の主婦となった米国人女性Tracy Slater氏が、日本人と韓国人からなるクラスのMBA研修旅行のプログラムに教師として参加し出会った教え子と恋に落ちてからを中心に自身の軌跡を記した本です。原題は「The Good Shufu」で英語で書かれたものです。日本語タイトルにもあるように著者は米国大学で英米文学の博士号を取得しボストンで講師やライターなどをして自立した生活をおくり、ボストンの暮らしを愛し、誰かに依存した生活を嫌悪していたはずが、真逆と思われるような大阪在住の主婦という立場を受け入れていったかについての心の葛藤が描かれています。著者は幼少期に両親の離婚で寄宿学校に入れられるという苦労を経験していますが、裕福なユダヤ人家庭でしたので、家事などは使用人を雇ってやらせればよいという価値観を持ち、料理や掃除を自身がやることなど考えられなかったようです。

 著者はボストンでのキャリアを継続し、大阪での主婦との二重生活を試みようとしますが、夫の母が亡くなって一人暮らしとなった父の介護が必要となり、自身の人工授精による不妊治療を継続するためにボストンとの二重生活はあきらめざるを得なくなりました。数回の流産を経験し、45歳を過ぎて人工授精はあきらめましたが、その後、奇跡的に自然妊娠し、安定期に入ったところまでで本書は終わっています。継父は妊娠を知らされますが、誕生を見ることなく、すい臓がんで亡くなりました。出生前検査に一喜一憂していましたが、無事に娘さんが生まれたようです。

米国人博士、大阪で主婦になる。 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ II-11)

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