富山県小矢部市の市立小学校で、担任が給食のおかずを無理やり食べさせ嘔吐させ、汚れた床を男子児童に掃除させたとして、教諭が担任から外されていたと報道されました。教諭が児童への罰や個人的な感情で、児童が嫌いなおかずを無理やり口に押し込んだとは思われず、好き嫌いをなくそうと考えて指導したものと想像します。しかし、このような指導は全く逆効果です。この担任は50代の女性教諭と報じられていますが、自身が給食を食べていた小学生の頃には嫌いなものを残すことが許されず、食べられない児童は昼休みや掃除の時間まで残されて無理やり食べさせられていた記憶があったかもしれません。本人が無理やり食べさせられた側であれば、そのような指導で苦手な食べ物を克服することはできず、その食べ物に対するいやな記憶が残ってより嫌いになっていたはずです。
苦味や酸味など本来生物が好まない味の食べ物を美味しいと感じたり好きになったりするためには、その食べ物を摂取したときに何らかの良い感覚を体験したことが記憶となる必要があります。ビールのように摂取した後に生理的な反応で心地よくなる場合のほかに、好きな人と一緒に食事をして楽しかったとか、みんながおいしいと言っている食べ物を自分も食べることができてうれしかったとか、いろいろな体験でその人なりの良い記憶が作られるものと思います。何度も無理やり食べさせられているうちに吐かなくなり、それが成功体験として良い記憶となる可能性がゼロとは言いませんが、より嫌いになる可能性の方がはるかに高いでしょう。
アレルギーなどの問題がなければ、そのおかずを食べることが本人のためになることを理解させ、少しずつでも自発的に食べてみようと思わせるような指導を継続して行い、無理をさせないことが好き嫌いをなくすことにつながるものと思います。